今回は顔料粒子の分散メカニズムについて簡単にまとめてみました。
塗料やインク、化粧品などの製品において、顔料粒子を液体中に均一に分散させることは非常に重要です。顔料粒子は通常、微細な固体粒子であり、何もしなければ凝集して沈殿したり、分散不良を起こしたりします。これを防ぎ、安定した分散状態を保つために水溶性高分子の一つである「分散剤」が用いられます。ここでは、そのメカニズムを簡単にDLVO理論を交えて解説します。(ものの本とかにも掲載されていますから、あくまでも簡単にです)
顔料粒子の凝集と分散とは
液体中に分散している顔料粒子には、主に2つの力が作用しています。
- 引力(ファンデルワールス力): 粒子が互いに引き合う力です。粒子間の距離が近くなるほど強くなります。この力により、粒子は凝集しようとします。
- 斥力: 粒子が互いに反発し合う力です。この斥力が引力よりも大きくなれば、粒子は安定して分散します。
DLVO理論は、この引力と斥力のバランスによって粒子の安定性が決まるという理論です。
- エネルギー障壁: 斥力エネルギーが引力エネルギーを上回る領域では、粒子が近づくのを妨げるエネルギー障壁が形成されます。この障壁が高いほど、粒子は凝集しにくく、安定して分散します。
- 第2次極小点: 粒子間距離が離れた場所に、わずかな引力によって粒子が緩やかに凝集する「第2次極小点」が存在することもあります。
分散剤を使用することで、このエネルギー障壁を高くし、粒子が互いに凝集するのを効果的に防ぎ、安定した分散状態を維持することができます。
分散剤の役割とメカニズム
分散剤は、顔料粒子の表面に吸着することで、粒子間に斥力を発生させ、凝集を防ぐ役割を担います。主なメカニズムは以下の2つです。

- 静電反発(荷電反発)
上記の図の左側が静電反発の模式図です。わかりにくい図で申し訳ないです。顔料がプラスの電荷を有し、
分散剤はマイナス電荷のポリカルボン酸系ポリマーを有するモデルにしました。顔料のプラスチャージに分散剤のカルボン酸イオンが吸着し、添加量が多くなると、顔料粒子の電荷のチャージがマイナスを帯びていきます。粒子間ではマイナス同士での電荷の反発が発生し、そのことが分散安定化につながります。簡単に表現をしていますが、顔料の分散安定化させるためには、ポリカルボン酸系分散剤の場合は色々最適化することが必要となってきます。顔料の特性に応じて、分子量やカルボン酸の量等分子設計する因子は色々あります。
2. 立体反発(高分子鎖の絡み合い)
二番目のモデル図も分かりにくくて申し訳ないですが立体反発のモデルを示します。分散剤の中には、粒子表面に吸着した後、液体中に長く伸びる高分子鎖を持つものがあります。ただ,この高分子鎖の設計ですが、粒子同士が接近しようとすると、これらの高分子鎖が互いにぶつかり合ったり、絡み合ったりして、物理的な障害となり、粒子がそれ以上近づくのを妨げます。これにより、粒子間に強い斥力が発生し、凝集を防ぎます。立体反発を付与させるポリマーは、主鎖とグラフトされている鎖の分子量の関係やまた顔料との親和性を有する置換基の選定など色々分子設計することは多いと考えます。